著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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僕は大学を卒業してから奨学金の返済を10年以上続けています。私立大学で理系で学費が高く月10万円と最大限借りたのもあって、返済総額も利息を含めて500万円以上と途方もない額になっています。
去年はその負担の大きさから減額返還の手続きをしましたが、より負担を下げるために「返還期限猶予」という手続きを取って一時的に奨学金の返済をストップしてみました。承認されれば経済的な負担も一時的に減るため金銭的に苦しい人こそ一時的にでもやってみて目の前の金銭面の不安を減らしてほしいです。
今回の記事ではそんな変換期限猶予の手続きについて流れを中心に解説しました。
奨学金の返還期限猶予の概要
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、返還期限の猶予を願い出ることができます。そのような状態になった場合は、延滞する前にすみやかに手続きをおこなってください。
返還を待ってもらう(返還期限猶予)|日本学生支援機構
審査により承認された期間については返還の必要がありません。適用期間後に返還が再開され、それに応じて返還終了年月も先送りされます。 ただし承認されない場合は返還を継続する必要があります。
以前奨学金の減額返還についての記事を書きましたが、減額返還は文字通り月々の返済を2分の1や3分の1に減額したうえで返済するものでした。僕の場合は2023年の6月以降は「23,102円」から3分の1の「7,700円」に減額されたうえで返済していました。
一方で返済猶予(返還期限猶予)は月々の返済を一度ストップするものです。返還期限猶予ができれば奨学金の月々の返済額も一時的にゼロになるため収入に不安がある人にとってはこれ以上ない策といえます。特にフリーランスをやっていると会社員と違って収入も安定しないもので、減額されたとはいえ奨学金の返済も地味に負担が大きかったのでいったん返済そのものをストップしようと思いました。
なお返済期限猶予は最大で120か月(10年)の制限がある点は注意しましょう。減額返還も180か月(15年)の制限があるので収入が安定してきたら返済額をもとに戻すのが望ましいです。また返済期限猶予も減額返還と同じで、
- 返済の総額が変わるわけではない
- どのみちあとで返済はしなければいけない
という点には注意しましょう。
あくまで目の前の負担を軽減する応急処置みたいなものですね。
奨学金返還期限猶予願の書き方と申請の流れ
ここからは少額返還期限猶予の申請の流れをスカラネット・パーソナルのスクショも交えながら解説しています。なお、マイナンバーを提出しているためインターネットで申請しました。
ワンタイムパスワードを発行して返済期限猶予願を選択
まずはスカラネット・パーソナルにログイン、「各種手続き」よりワンタイムパスワードを発行したうえで「返済期限猶予願」を選択。
減額返済などほかの手続きもこの点は同じです。
インターネットでの申請が可能か確認。ダメなら郵送で提出
奨学金関連の手続きは基本的に「郵送」か「インターネット申請」かの2択になります。最初の手続きは郵送が必須になることが多いですが、最初の郵送の際にマイナンバー(マイナンバーカードのコピー)の提出があれば2回目以降の手続きはインターネットでも可能になります。
基本的にマイナンバーを提出していればだいたいの手続きはインターネットでも手続きが可能になっています。不可になっている場合はマイナンバーを提出するか少し面倒ですが郵送で手続きをしましょう。
マイナンバーカードは賛否両論ですが奨学金関連の手続きでは非常に有能ですね。
初めての申請やマイナンバー提出がない場合などはインターネット申請ができないため郵送での申請になります。奨学金返還期限猶予願は日本学生支援機構のHP内にもありますのでダウンロードして必要事項を記入しましょう。
奨学金返還期限猶予願はコチラ・・・奨学金返還期限猶予願(PDF)
年収・所得が返還期限猶予の条件。会社員は300万円以下、フリーランスは200万円以下になっているか確認
経済困難の収入(所得)基準
経済困難(一般猶予の申請事由)
給与所得者 年間収入金額(税込) 300万円以下 給与所得以外の所得を含む場合 年間所得金額(必要経費等控除後) 200万円以下
奨学金の返還猶予は誰でもできるわけでなく、年収・所得が一定以下である必要があります。具体的には大まかにいうと会社員であれば年収300万円、給与以外の所得があるなどフリーランスの方は200万円以下であることが条件になっています。
フリーランスの方は収入が200万円を超えていても、経費や控除などを引いて「所得」で200万円以下なら対象になります。
返還猶予の期間を入力
年収などの条件を満たしたらあとは個人情報の確認や猶予の期間の設定です。
猶予の期間は最大で1年まで選択でき、いつから開始するかも選べます。
このように受付完了の旨の画面が出れば手続き完了です。
奨学金返還期限猶予が承認されればハガキが来る
2024年3月31日にオンラインで返還猶予の手続きをして、4月20日ごろに画像のように奨学金返還期限猶予承認の手紙が来ました。手紙は連帯保証人宛てに来ました。申請から承認まで約3週間といったところですね
僕の場合は連帯保証人が父で、実家暮らしで同居してるため自宅に送られました。一人暮らしで連帯保証人と別居している場合は手紙が来たかなど確認しておきましょう。
また、スカラネット・パーソナルでも同様に返還期限猶予の申請が承認された旨のお知らせが出ています。
これにより2024年4月分~2024年3月分の返済は猶予という形でストップしました。
何も手続きしなければ2025年4月の返済からは通常に戻るので、その時の年収などの状況によってそのまま満額を返すか減額返還、返還猶予などを選ぶ予定です。
変更がなければ今後の手続きもインターネットで完結するはず。
奨学金返還期限猶予の申請が通らないこともある?
奨学金返還期限猶予も審査はあるので審査に落ちる可能性もあります。審査に落ちる可能性としては以下が考えられます。
- 書類に不備があった
- 年収が基準を上回っていた
- 返済を延滞している(審査が通らないというよりは別途申請が必要)
書類はマイナンバーの提出があればほとんど省略できるので問題ないですが、マイナンバーの提出がないと所得証明書など必要な書類も増えます。年収は所得証明書や確定申告書で確認できるので基準以下かを確認しましょう。
また、返還期限猶予の申請の時点で返済の延滞がある場合は別の方法での申請が必要です。
延滞しているため過去の延滞期間について猶予を希望される場合は、原則として、延滞が始まった年月から1年ごとに「奨学金返還期限猶予願」と「所得証明書」等事由に合った証明書を添付して願い出ていただくことにより審査します。
延滞している場合の返還期限猶予の申請手続き
ただし、延滞開始年月からの願い出の事由および証明書がないため延滞開始年月からの猶予申請ができない場合は、猶予申請できない期間についてご入金いただくことで猶予申請が可能になります。
なお、猶予申請できない期間のご入金も困難な場合は、延滞を据え置いた返還期限猶予の願い出になります。
奨学金返済の延滞をすると面倒になるので、返済が難しくなりそうと思ったら早めに減額返還か返還期限猶予の申請が必要ですね。
返還猶予をすることで利息や返済総額は変わらないのでご安心を
元々利息がある第二種奨学金で借りている人向けの話です。
- 返還期限猶予を使うことで利息や返済総額は増える?
- 返還期限猶予を使っても利息や返済総額は増えません。あくまで返済や返済期間が延びるだけです。
奨学金以外の一般的な借金の場合は、奨学金の返還猶予のように返済を遅らせると利息が増えるケースもあります。
遅延損害金(遅延利息)とは、支払料金を期日までに払えなかったときに発生するお金です。
遅延損害金は一定の料率を支払いを滞納した期間に掛けて計算するため、支払うべき金額と遅延している期間によって金額が変わります。 大きな金額を長期間支払わずにいると、遅延損害金も大きな金額になってしまう場合があるので注意しましょう。
遅延損害金とは?計算方法から解決方法まで専門家が簡単解説します!
そのため一般的な借金は返済を猶予してもらうなど、返済の期日や期間を延ばすと増えた利息の文だけ返済総額も増えるので、滞りなく返済するのが一番いいです。
ただし奨学金になると話は変わり、返還期限猶予で返済をストップしたり、月々の返済額を減らしたりしても利息が増えたり返済総額が増えることはありません。
返還期限猶予
経済困難、傷病、災害等、奨学金の返還が困難になった場合、返還期限を猶予する制度です。
返還を始める皆さんへ|独立行政法人日本学生支援機構
- ※1願い出が必要です。審査があります。
- ※2第二種奨学金の場合、猶予期間中は無利息です(利息は増えません)。
- ※3猶予期間終了の翌月から返還再開となります。
そのため返還期限猶予を使ったことによるデメリットはほぼないと言えます。ただし返済すべき総額が変わらない点やどのみち後で返済はしなくてはいけなくなるため、収入が安定したら返還期限猶予を解除して、返済を再開するのがベストです。
ちなみに第一種奨学金は元々利息がないですが、返還期限猶予を使ったからといって利息が新しく発生することはないのでご安心ください。
収入の不安定なフリーランスや低所得の会社員はぜひ活用を
奨学金の返還期限猶予も減額返還も低所得者を主な対象としています。特に僕みたいなフリーランスは収入が不安定のため、奨学金の返済に関しては常に不安が付きまといます。当然ながら他の税金や固定費、生活費などのありますので、そこに奨学金も入ってくるとかなりの負担になります。
また、会社員も収入は安定していますが業界や会社によっては低所得に分類されるくらいの給料しかもらえない場合もあります。その中で奨学金を返済していくのは意外と難しい面もあるので、返還期限猶予や減額返還の活用も検討していただければと思います。実際に奨学金の返済を苦に自殺したという事例もあります。
2022年の自殺者のうち、理由の一つとして奨学金の返還を苦にしたと考えられる人が10人いたことが、警察庁などのまとめでわかった。自殺者の統計が同年から見直され、原因や動機に奨学金返還の項目が加わったことで初めて明らかになった。
自殺の動機「奨学金の返済苦」、22年は10人 氷山の一角との声も|朝日新聞
最悪の事態を招く前に返還猶予や減額返還など何らかのアクションは起こしてほしいです。特に会社員の立場を捨てる形になると各種税金なども自分で払うことになり奨学金以外にも「こんなにお金かかるの⁉」と改めて驚くことも多いですからね。
実は無職になっても意外とお金ってかかります。以下の記事で会社を辞めてから気づいた生活にかかるお金について税金を中心に解説しています。
まとめ
- 奨学金返還期限猶予の手続きをして承認されると一時的に奨学金の返済をストップできる
- すでに減額返還などほかの手続きでマイナンバーの提出があればインターネット上での手続きが可能
- 返還猶予が使えるのは最大で120か月(10年)
- 返還猶予は1度につき最大12か月(1年)適用される
- 返還期限猶予が承認されれば連帯保証人宛てにハガキが送られてくる。スカラネット・パーソナル内でも確認が可能
- 返還期限猶予を使ったからといって利息や返済総額は変わらない
今回は奨学金の返還期限猶予についてインターネット申請での流れを中心に解説しました。奨学金は月に万単位の返済をすることもあり、しかもそれを10年~20年に渡ることもあり長い目で見るとかなり負担が大きいです。
奨学金返済の負担により生活に支障が出る前に早めに手続きをしましょう。