著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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涼しく生きるでは日々ブラック企業に関する様々な情報提供をいただいています。
その中で今回は知人でブラック企業に勤め、かつ労働局を介して「あっせん」という制度を活用した「keisiteさん」から情報提供をいただき当時のことを文章にまとめてくださいました。
労働局がいい例ですが、ブラック企業の相談には公的な窓口があります。今回の記事を通じてブラック企業で苦しんだ時の労働局の活用例を見出しブラック企業から身を守っていただければと思います。
なお、今回の記事の文面は提供いただいた文面をなるべくそのまま掲載しています。
keisite
ブラック企業はブラックだと自覚しないまま存在しています。 あなたが大切にされ活躍できる職場にいられるよう、あっせんを利用して労働問題が解決されることを祈っています。
あっせんとは何か
まずは労働局に行き、あっせんを使いたい旨を申し出ます。あっせんは簡単にいうと『労働局が法律機関と連携して、労働相談に法的に対処することを支援してくれる仕組み』
あっせんとは、労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間のトラブル(個別労働紛争)について、当事者の間に学識経験者である第三者機関(あっせん委員)が入り、当事者間の話合いを促進することにより、紛争の解決を援助する制度です。
あっせん手続は参加が強制されるものではなく、不参加の場合でも不利益はありません。労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省
最寄りの労働局に行き事情を説明する
労働局に行き、相談員の人に事情を話します。
- 「給料の面で不合意がありながら働いていた」
- 「根拠がないことを指摘され誠意を持って働いていた気持ちを損ねられた」
等、素直に話します。もう退職を決めていたので、この際なので法的に処罰して欲しかったので出向きました。こんなふうに、何かまずおかしいと思ったら労働局に相談できます。
個人的な意見なのですが、黙っていたらそのままです。その後その職場で働く人も浮かばれません。ブラック企業が減り、世の中がよくなるためと思えば正義の心を持てます。遠慮せず労働局に言ってください。
ちなみに水戸だと労働局・労働基準監督署は水戸駅南口の近くにあります。
相談員とのやり取り
相談員が内容について法的な根拠を持って何の内容に当たるかを教えてくれます。「その内容は民法第OO条の~~~に当たるね」と言ってくださいました。私の場合は「不法行為」でした。
不法行為とは、故意や過失によって、相手に損害を発生させることです。不法行為を行ったら、その人は相手に対し、損害賠償をしなければなりません。反対に言うと、不法行為をされたときには、相手に対し、損害賠償請求をすることができるということです。
不法行為とは故意や過失による相手への損害です|弁護士法人ALG&Associates
あっせんの相談を受けるための、書類を書いて
- 住所
- 名前
- 相談内容
法律的に相手の不法行為に抵触していると確認できたので、法的文書の作成に入ります。法的文書は決まった形式で書かれていれば法的効力を発揮する文書です。手書きでも大丈夫ですが、印鑑が押されてあることが必須です。
職場に向けて法的文書を書く
法的文書のフォーマットに沿い、
- 損害賠償請求の件と具体的な請求内容を書く
- 精神的な苦痛についてなんなのかを書く
今回は具体的に、
- 「言われのないことで同僚に対する差別をしていると指摘され、人格を傷つけられました。教員として、差別や分断がなくなるよう指導していたのに」
- 日付が書かれている
- やられたこと損害の内容を詳細に書いてある
- 損害賠償の金額を記す
- 口頭で約束した金額と、実際に支払われた金額の差額分 XX万円を請求します
- 精神的なものについての賠償金
- 賠償のために振り込んで欲しい口座を書く。勤め先なら、「給与振り込み口座に」でOK
- 人格を傷つけられた、精神的、経済的、苦痛を受けた等
これで内容証明で送りました。これで正式に法的な請求力を持った文章を相手に送ることになり、相手に法律に反していると突きつけることができます。
損害賠償請求後の職場の対応
この請求の内容に応えたかどうかでその後の法律的な扱いが決まります。もしこの請求の内容の通り損害賠償の慰謝料が口座に支払われていたら、そこで解決したことになります。
逆にこれに従わず期日までに振り込まれていなかった場合は「係争状態」に突入します。係争状態とは「損害賠償請求した側とされた側とで、事態が解決せず裁判に持ち込める状態」になったことを表します。
訴訟で、当事者間で争うこと。
係争(ケイソウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
この時は振り込まれなかったので係争状態に発展します。ここからはいつでも裁判を起こすことができます。
裁判を起こす場合
あっせんを使って請求しているので、ここからは裁判に持ち込むかあっせんを利用した調停になります。もしもここから裁判を起こしたら、相手に訴状が行きます。
訴状には裁判の期日が書いてあり、相手はそれに従わなくてはなりません。国からの命令となるため、出廷が義務になります。
あっせんを利用
あっせんを利用した調停は
- 同じ日に、同じ場所で、双方が合意形成する機会を設ける
- あっせん員が、仲介する
- 実際に解決した例は、3万くらい払われた(請求した金額よりは少ない)
- 1ヶ月~数ヶ月かかり、2ヶ月以内が約80%
今回訴えた私と訴えられた使用者の双方をあっせん委員会が取り持ちます。双方が納得できる内容になるように、謝罪を求めたり、慰謝料を決めます。
私は利用しませんでしたが過去の茨城県内の例では、慰謝料については数万程度請求した金額をそのまま支払ってくれた例はないと言います。つまり損害賠償請求の金額そのままを求めるなら正式な裁判が必要ということです。
しかし弁護士を雇うにお金がかかりますし、裁判には年単位の時間がかかります。なので私はあっせんを利用しましたし、内容を正直に「お前はこんなことをしたんだぞ」と伝えることができてよかったです。
請求金額が振り込まれることはありませんでしたが、スッキリしました。顔もみたくない相手だったので、係争状態のまま、今は放っておいています。それよりも相手に事態の詳細を突きつけることの方が私にはスッキリしました。結果として、相手方からは退職時に必要な書類がすぐに返ってきました。
まとめ
いかがでしたでしょうか
- 労働局に相談
- あっせんを利用する
- 法的な文章で損害賠償請求する
- 係争状態になったら、裁判かあっせん調停
ブラック企業は、甘えさせているからブラックなままなんです、そんな企業にいるあなたにも責任があります、というか、そんな企業で傷つけられたままいることが勿体ありません
ブラック企業は、ブラック企業だと自覚しないまま存在しています
社員さんもお客さんもきっとあなた自身もいつの間にかブラックだと気付かずに働かされています。そしてそれを自覚して声を上げた瞬間に破門されたり、嫌な扱いをされるかもしれない、醜い企業です。
そんな企業に時間を費やす暇はあなたにはありません。あなたが大切にされ活躍でき、会社も喜ぶ、それがあなたがいていい職場です。ブラックな実態を放っておけば、残るのは次に入った社員が傷つく職場です。
あなたにはブラック企業にいる責任も義務もありませんから堂々と悪事を知らしめて、お断りしてブラック企業を根絶しましょう。それが世の中を生きる大人の一員としての役割でもあるかもしれませんから。
提供いただいた情報、文章は以上です。
編集後記
今回は「あっせん」に関していただいた情報をもとに記事にしました。実際法律に違反している企業も多く、時には明らかな損害を被ってしまうような労働者もいたりします。そんな時に裁判となると時間やお金がかなりかかってしまいますが、「あっせん」であれば無料でできたり、年単位でかかることもある裁判と違い数か月程度で終わることが多いため訴える側としても労力をかなり抑えられるのは大きなメリットだと感じています。
僕自身もブラック企業にいた頃や辞めた頃は裁判くらいしか知らなかったので、あっせんを知ってる人も意外と少ないかもしれません。
会社や上司から不当な扱いを受けて被害を受けた。訴えたいけど裁判をするにはハードルが高い。そう感じている方に「あっせん」を1つの手段として知っていただければと思います。
最後に今回情報・文章を提供していただいたkeisiteさん。改めてありがとうございました。
keisite
ブラック企業はブラックだと自覚しないまま存在しています。 あなたが大切にされ活躍できる職場にいられるよう、あっせんを利用して労働問題が解決されることを祈っています。