著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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僕は大学生の時に奨学金を借りていましたが、いわゆる「貸与型」だったので社会人になってから返済に追われています。収入によっては減額返還や返還を一時的に止める返還猶予などの制度もありますが、それでもいずれ返さなくてはならないので負担は意外と大きいです。
そんな中で実は奨学金にはもう一つ「給付型」という種類もあります。給付型は社会人になってからの返済が不要なので安心して使うことができます。今回の記事では給付型奨学金の解説と実際にある給付型奨学金の実例を紹介しています。
給付型の奨学金なら後々の返済の必要なし

奨学金は大きく分けて『貸与型』と『給付型』の2種類があります。
貸与型はいわゆる『借金』のようなもので、高校や大学在学中に奨学金を借りて卒業してから返す仕組みです。おそらく世間一般言う奨学金の大半はこの貸与型で奨学金を借りている人の約8割は貸与型と言われています。
【奨学金受給の現状】全体の約8割が貸与型を受給、給付型は3割。約6割が独立行政法人日本学生支援機構*(以下、JASSO)からの奨学金を受給し、民間の給付奨学金の受給者は1割未満。給付奨学金のさらなる普及、活用への可能性が期待される
ガクシー「奨学金に関する実態調査2023年」を発表 | 株式会社ガクシーのプレスリリース
貸与型は募集人数が多かったり、利用にあたっての成績などの制約もそこまでないため活用に当たってのハードルは給付型より低いですが、結局は『借金』に当たるため社会人になってからは給料でやりくりしながら毎月返済していく努力も必要です。返済期間も数年で終わるものから長いものは20年に渡るものもあります。
一方で給付型は貸与型と違い、『もらえる』ような意味合いなので卒業後の返済は原則不要です。そのため社会人になってからの給料から実質奨学金の返済が引かれる心配はないですが、給付型の募集人数が少なかったり成績上位3分の1など成績においての条件があることも多く、貸与型と比べると活用のハードルが高いです。
また、最近ではJASSOだけでなく一部の民間企業や団体が給付型の奨学金を設けているケースもあります。奨学金の返還の肩代わりをするような企業もあり、給付型奨学金だけでなく返還においても力になる企業も徐々に出てきています。
給付型奨学金のメリット
卒業後の返済が不要
給付型奨学金のメリットは何とも言っても返済が不要なこと。
僕はJASSOの第2種の奨学金を借りていましたが、36歳の今でも返済はまだ終わっていません。元々大学生の時に月10万円を4年間総額480万円を借りていましたが、返済では利子も加算されて返済総額は550万円くらいになりました。卒業後、月23,000円ほどを返済することになり会社員の時は何とか返済していましたが、無職やフリーランスになり収入が不安定になると返済にはかなり苦労しました。現在は減額返還、返還猶予などを活用していますが、まだまだ返還完了までは先が長そうです。
給付型はこのように卒業後に返済に悪戦苦闘しなくていい点ではうらやましいですね。

僕で言うと正社員の塾講師時代の手取りが18万円でしたが、うち約2万円を毎月奨学金返済に充てていたので、給料の1割ちょっとを毎月持っていかれていました。無職やフリーランスなどで収入が低い、もしくは不安定な場合は減額返還などを活用するのもオススメです。
将来の選択肢が広がる
貸与型奨学金を利用すると、卒業後に安定した収入を得られる職業に就かなければならないというプレッシャーを感じる場合もあります。特に、高額の奨学金を借りている場合、返済計画を考え給与が高い職業を選ばざるを得ないこともあり得ます。
しかし給付型奨学金なら返済不要なため、収入面での不安を気にせず、自分のやりたい仕事に挑戦できます。起業、フリーランス、ベンチャー企業、NPOなど、収入が不安定な職業にもチャレンジしやすくなるのがメリットです。

奨学金の返還のために無理に高収入な仕事を選ばなくても良い。
精神的なストレスが少ない
貸与型奨学金を利用すると、卒業後に待ち受ける返済のプレッシャーが精神的な負担になります。特に社会人になってから思うように収入が得られなかった場合、奨学金の返済が生活を圧迫し精神的に追い詰められることもあります。

実際に奨学金の返済を苦に自殺者が出たケースもあるそうです。
一方で給付型奨学金を受けた場合、卒業後の返済の負担がなく学業やキャリアの選択に集中できます。卒業後も経済的な余裕を持ちやすいため、ストレスなく将来の計画を立てられる点は大きな魅力です。

社会人はもちろん、学生のうちから将来の返済など余計な心配をしなくていい。
経済的な理由で進学を諦めるリスクを減らせる
貸与型奨学金は「借金」としての認識を持つ人もおり、家計の厳しい家庭では、「借金をしてまで進学するべきか?」と悩むケースも少なくありません。その結果、進学を諦めたり学費を抑えるために「進学なら地元のみ」など進学先の選択肢を狭めてしまうことがあります。
しかし給付型奨学金があれば、経済的な理由で進学を断念したり選択肢を狭めるリスクを減らすことができます。誰もが学びの機会を得られるようになるのは、社会的にも大きな意義があります。

僕も塾講師時代に「月謝の負担が大きいから」という理由で泣く泣く退塾したご家庭を見てきました。経済的な理由で塾などのサポートや進路の選択肢が狭まるのは避けたいですね。
優秀な学生にとって学費のハードルが下がる
給付型奨学金は、学業成績が優秀な学生を対象に支給されることが多いです。これは成績優秀者が経済的な理由で進学を諦めることがないようにするためです。こうした奨学金を利用すれば、家庭の経済状況にかかわらず学業に集中できる環境が整います。
成績優秀者にとっては努力が報われる制度であり、勉強に対するモチベーション向上にもつながります。高額な学費の負担を減らし、より充実した大学生活を送ることができるのも大きなメリットです。

特に優秀な人で大学に行きたい人が大学に行けない、進学をあきらめてしまうのは社会としても大きな損失だと思います。
給付型奨学金のデメリット
募集人数に限りがあるもしくは少ない
奨学金と言えばJASSOの貸与型奨学金を使う人が多いですが、こちらは明確な募集人数はなく多くの人が申し込みます。
一方で給付型は1種類で10名、20名と奨学金をもらえる人数に限りがあることが多く、かつ給付型奨学金を設けている団体等もそこまで多くないです。当然ながらこの何倍もの人が応募をしてくると予想されるので、倍率で考えると競争率もかなりのものになりそうです。
応募条件が厳しい場合もある
また、給付型奨学金は誰でも受けられるというよりは成績や学校、地域など様々な条件が付いていることが多いです。
たとえば 公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団も給付型奨学金を設けていますが、対象となる大学が限られておりしかもほとんどが有名国公立、私立大学ばかりです。

大学の顔ぶれからして高偏差値なところがほとんどです。このように特定の高校、大学に通っていることが条件な奨学金は意外と多い印象です。
各新聞社が設けている給付型の奨学金もありますが、学生が新聞配達の仕事をするのがセットになることが多いです。ただし給料もいただけたり、部屋を提供もしくは家賃補助までしてくれる場合もあるため、新聞配達の仕事は大変かもしれませんが待遇自体はかなり手厚いともいえます。

いずれにしても給付型は返済不要だからこそ、給付までのハードルが高い理由もちゃんとあるのかもしれません。
なお、全国の給付型奨学金に関しては「奨学金.net」に掲載されています。地域やジャンルなどに区分けされて掲載されているので、自分が利用できそうな奨学金を探してみましょう。
給付型奨学金だけでは学費全額をまかなえない
給付型奨学金は返済義務のある貸与奨学金と比べると金額が低い傾向があります。後述の民間企業による給付型奨学金も月1~3万円、年間12~36万円くらいが多いです。(大手企業だと額が多い場合もある)
一方で大学の学費はこれ以上の額が多く、例えば国立の茨城大学は
- 入学金282,000円
- 授業料前期と後期で267,900円。年間で535,800円
と特に入学金も込みの1年生は年間で約80万円ほどの学費がかかります。これが私立大学、特に理系学部になると授業がさらに上がり、年間の学費が100万円を超えることもあります。

僕の母校の私立大学(農学部)は年間の学費が150万円くらいでした。
そのため給付型奨学金のみで学費をまかなうことは難しいので、自分でお金を用意する、アルバイトをする、他の奨学金と併用するなどの対策が必要です。

自分が使おうとしている奨学金が他の奨学金と併用可能かどうかは要確認。
給付型奨学金の例(茨城県)
株式会社山新。公益財団法人山新育英財団

茨城県内を中心にホームセンターを展開している山新は給付型奨学金があります。高校生が月額2万円、大学生は月額3万円の奨学金をもらえます。
ただし高校生、大学生ともに新入生のみが対象な点にご注意ください。また高校生、大学生とも県内の中学校や高校を卒業し、茨城県内に在住していることも条件です。

新入生のみが対象とは言っても、一度奨学金をいただければ高校は3年間、大学は4年間と留年等がなければ卒業まで奨学金はいただけるようです。1年だけでなく長い期間奨学金をいただけるのはありがたいですね。
桂不動産株式会社。~大学生応援プロジェクト~桂不動産奨学金制度
桂不動産はつくばなど茨城県の県南地域を中心に展開している不動産会社です。
桂不動産の給付型奨学金は月1万円を1年間支給する形で、一人暮らしの茨城県もしくは千葉県内の大学生・大学院生を対象にしています。
また桂不動産ならではのメリットとして、給付型の奨学金にエントリーして奨学金の採用にならなかったとしても、エントリーしてた人が桂不動産で部屋を探して成約された場合は仲介手数料を20%割引という特典があります。

奨学金をもらえなかった人にも優しい特典。
まとめ
- 給付型奨学金は原則返済不要
- 給付型奨学金の種類や募集人数はあまり多くない
- 給付型奨学金は貸与型と比べると額が低いことが多く学費全部をまかなうのは難しい
- 民間企業や団体でも給付型奨学金の制度を設けているところがある
給付型奨学金はよくある貸与型と違って卒業後の返済が不要な点が魅力的ですね。僕は貸与型でガッツリ借りていたせいで、大学卒業から10年以上たっても奨学金の返済がいまだに終わりません。
その点、給付型奨学金なら返済が不要なので安心して社会人になって仕事ができます。奨学金の返済に追われるとそれだけお金が必要になるため、給料の高い仕事を無理やり選ばなくてはいけないなど意外とデメリットもあります、何よりキャリアの選択の幅を狭めてしまう弊害もあります。
給付型奨学金は貸与型と比べると数が少ないのもあり意外と知られてないので、今回の記事で給付型奨学金を知り少しでもお金の負担が減ってもらえればうれしいです。