著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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奨学金の返還って大変ですよね。
僕も2011年に大学を卒業してから毎月2万3千円を返還し続けてきましたが、2023年から減額返還に切り替え、2024年からは返還猶予も活用しています。特に僕のようにフリーランス1本になると収入も不安定になるため、見通しや計画を立てづらいことも多いです。
会社員で安定した給料があっても返還には苦労する場合がありますが、最近一部の企業では「奨学金返還支援制度」を活用するところも出てきています。企業が本人の代わりに奨学金を返還する制度でうまく活用すれば、金銭面の負担がかなり減ることもあります。
そんな魅力的な制度についてメリットから課題まで解説しました。
奨学金返還支援制度とは?
企業が奨学金を代わりに返還してくれる制度
本制度は、機構の貸与奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)を受けていた従業員に対し、企業等が返還残額の一部または全額を支援する制度です。本制度の支援(入金)方法は、企業等から直接機構に送金していただきます。
Q1企業等の奨学金返還支援とはどのような制度で、どのようなメリットがありますか。
また、従業員にとっての本制度のメリットは、経済的負担の軽減や支援を受けた額の所得税が非課税となり得ることです。支援を受けた額は原則として標準報酬月額の算定のもととなる報酬に含めません。企業等にとっては、学資に充てる費用となるため、損金算入ができ、かつ「賃上げ促進税制」の対象となります。
企業が奨学金を本人に代わって返済する制度ですね。従業員にとっては会社から給料をいただいたうえで企業が返済をする、もしくは給料と一緒に返済する分の金額も支給してくれます。返済の肩代わりをしてくれる額は全額もしくは一部かは企業によりますが、一般的には月々の給料から奨学金返済の額を捻出することを考えれば、かなりありがたい制度とも言えます。
利用者数はまだごく一部
JASSOは2021年4月、奨学金の貸与を受けた本人に代わり、企業が奨学金の全額もしくは一部をJASSOに直接送金できる形で「奨学金返還支援(代理返還)制度」を始めた。活用する企業は当初の65社から増え続け、今年7月時点で972社。利用人数も21年度の813人が22年度は1708人、今年度は7月末時点で2057人と増えている。
JASSOのホームページによると、建設業や医療関連など、制度を利用する企業は多岐にわたる。JASSOの担当者は「想定以上のニーズがあった」と語る。
社員の奨学金を肩代わり、900社超 狙いは人材確保 教員採用でも
我が国の高等教育機関で学ぶ学生365万人のうち、113万人(31.0%)が本機構の貸与奨学金を利用しています。
日本学生支援機構について(令和4事業年度業務実績等)
学生の「3.2人に1人」が本機構の貸与奨学金を利用していることになります。
奨学金返還支援制度は2021年から始まった比較的新しい制度で、2023年時点で2000人ほどと徐々に増えています。
一方で奨学金を借りる人は毎年100万人を超えているので、全体で考えると奨学金返還支援制度を活用している人は、まだほんの一部とも言えます。
企業の数で言うと2024年11月時点で全国で976社。そのうち東京都で198社、茨城県で10社が奨学金返還支援制度を活用しています。年収によっては奨学金の月の返済額を半分にするなども可能ですが、その分返済期間伸びるのでできれば給料などで上手くやりくりして返済したいところ。
市町村が奨学金を返還してくれる制度もある⁉
今回の記事は企業による支援の話ですが、市町村で奨学金返還の支援や助成金を出しているところもあります。例えば茨城県筑西市では「令和6年度筑西市奨学金返還支援助成金」と題して、最大で年間18万円を助成してくれる制度もあります。
予算の都合上、人数に限りがあったりその市町村に居住するなどの条件がありますが、勤務先に関する縛りはないことも多いため自分の住んでいるもしくはこれから住む市町村で制度があれば活用する価値はあると考えられます。
奨学金返還支援を活用するメリット
経済的な負担が減る
やはり奨学金の返還を企業が肩代わりしたり支援してくれることで自分の負担が減るのは大きいですね。企業によっては借りてる本人ではなく企業の方で返還をすることもあるので、そうなれば給料から奨学金の返還のお金を捻出しなくてもよくなるので、生活費や趣味などにお金が回しやすくなります。
早期返済が可能になる
企業によっては奨学金返還支援制度を活用することで、通常の返還より多くの額を一度に返還することも可能なため、通常よりも速いペースで奨学金の返還が進む場合もあります。
それができれば繰り上げ返済と同じく予定よりも早く返還が完了するメリットもあります。奨学金を早めに返し終えることで、貯蓄や投資による長期的な資産形成がしやすくなるのはもちろん家のローンや教育費など様々なマネープランの見通しも立ちやすくなります。
奨学金の月々の返還額を減額したり、返還そのものをストップすることも年収によっては可能ですがどうせ後で返さなければいけませんからね。少なくとも奨学金返還支援制度を活用している間は、返還が滞ったりペースが落ちる可能性は低くなります。
奨学金返還支援を活用するデメリットと注意点
必ずしも全員が対象ではなく雇用形態や年齢などの条件がある場合も
奨学金返還支援制度は奨学金返済中であればだれでも利用できるわけではありません。企業によっては条件を設けていることもありみられるのが、
- 30歳まで
- 正社員のみ
といった形で年齢や雇用形態による条件が付いている企業もあります。この場合、せっかく奨学金返還支援があると思って入社したのに実は支援の対象外なんて可能性もあるので、対象や条件は事前にチェックしましょう。
必ずしも全額を支援・補助してくれるわけではない
奨学金の支援は必ずしもすべての返還をカバーしてくれるわけではありません。もちろん全額を支援してくれる企業もありますが、中には
- 月額2万円まで
- 最大総額100万円まで
のように月の返済の額や総額に上限が設けられている場合もあります。この場合も上限を超える分は自分で返還しなければならないので注意が必要です。
転職・キャリアチェンジに対してのハードルが上がる
奨学金返還支援制度は活用する分には非常に魅力的な制度と言えます。奨学金の返済に苦労しており、かつその企業に魅力を感じたうえで奨学金返還支援制度が設けられている企業に入社することも悪いことではないと思います。
一方でキャリアアップの観点から転職が必要だったり、万が一その企業がハラスメントや長時間労働が常態化しているブラック企業だった場合は辞めることも視野に入れた方がいい場合もあります。ただ、奨学金返還支援制度がここで良くも悪くも壁になることも考えられます。
会社を辞めれば対象からは外れるため、退職以降の奨学金の返還は自力でやる必要があります。
ブラック企業、特に明確に体調を崩している、症状が出ている場合は退職や休職を検討しましょう。特に精神疾患などメンタルにかかわるものは影響が長く残りますからね。
企業が延滞をすることによるトラブル
可能性は低いでしょうが、企業が資金繰りや単純なミスなどで奨学金の返還を延滞する可能性もなくはないです。特に3か月以上延滞が続くと、信用情報にも影響が出てクレジットカードを作ったりローンを組むのが難しくなるリスクもあります。
しっかりした企業なら起こることはないでしょうが、可能であれば企業が返還しているとはいえ自分でもちゃんと返還の状況を確認しておくと安心です。
まとめ
- 奨学金返還支援制度がある企業に就職すると企業が月々の返還する奨学金の全額または一部を代わりに返還してくれる
- 給料とは別なことが多いので経済的な負担が減ったり、返済が早まるなどのメリットがある
- 企業によっては「正社員のみ」「30歳まで」など雇用形態や年齢による条件が付いていることもある
- 必ずしも全額を支援してくれるわけではない
- 奨学金に固執しすぎて転職などのキャリアアップのチャンスを逃してはいけない
昨今は税金の上昇や物価高などもあり、その中で奨学金返還のやりくりは非常に大変になっています。その中で企業が一部とはいえ奨学金の返還を代わりにやってくれるのは非常に良いことだと思います。
現状、奨学金返還支援制度がある会社はまだまだ一部に限られますが奨学金の減額返還や返還猶予を使うハードルも少しずつ下がってきていたり、奨学金返還に関しては問題点も指摘されているので、奨学金返還支援制度はそれに則した制度が増えることに期待したいですね。