著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
2024年11月25日に水戸市民会館で開催された「過労死等防止対策推進シンポジウム」に行ってきました。11月に全国で開催されているシンポジウムで過労死を中心に労働問題に関する情報や体験談を聞いてきました。
過労死等防止対策推進シンポジウムとは
近年、働き過ぎやパワーハラスメント等の労働問題によって多くの方の尊い命が失われ、また心身の健康が損なわれ深刻な社会問題となっています。本シンポジウムでは有識者や過労死で亡くなられた方のご遺族等にもご登壇をいただき、過労死等防止対策推進法施行から10年、改めて過労死等の現状や課題、防止対策について考えます。
過労死等防止対策推進シンポジウム
僕が大学を卒業し、就職した2011年ごろには「ブラック企業」というワードも耳にするようになりその中で過労死で亡くなる方の話も多少ながら聞くようになりました。そんな中で2014年に過労死等防止対策推進法が施行され法律面からも過労死する人を減らす動きは出てきました。
一方で法律施行から10年たつ今でも過労死は社会問題に位置し、まだまだ課題が多いのも現状です。
今回参加した過労死等防止対策推進シンポジウムは毎年11月に全都道府県で開催されています。
過労死等防止対策推進シンポジウムの内容
- 茨城労働局労働基準部より挨拶と過労死などの労働問題に関する統計と現状
- 北海道新聞記者の牧内昇平さんによる基調講演「取材から見えてきた過労死の実態」
- 過労死ご遺族による体験談
茨城労働局による現状解説
茨城労働局からは統計を用いた労働問題の現状の解説が主でした。たとえば週の労働時間は「40時間」と労働基準法では定められていますが、オーバーしている事業所も多いです。統計では特に『週60時間以上』の事業所に関する統計に触れ、特に業種で見ると「運送業」「宿泊・飲食業」「教育業」で労働時間が週60時間以上の人の割合が高いもしくは年々増加傾向とのことでした。
他業界は数%で推移してましたが、この3つの業界は15%前後で推移してました。
北海道新聞牧内記者による基調講演
続いて牧内記者からは記者だからこそ見えてきた過労死の実態について。統計的なものは厚生労働省のサイトなどを調べればある程度出てきますが、興味深かったのは過労死したご遺族や会社への取材に関する話。
過労死というと過労で苦しんでいる人が自殺したり、脳出血などの疾患で亡くなるケースが多くそれだけ本人も苦しかったのはもちろんですが、ご遺族への取材の話を聞いてると、残されてしまったご遺族の苦しみや悲しみなども伝わってきました。
特に例として挙がった市役所職員の方に関しては、当時小学校1年生だったお子さんが詩を作り、それをもとにできた歌がYouTubeにも公開されています。歌詞に注目すると当時のお子さんの思いも伝わってきます。
子供ながらにお父さんがいなくなってしまった(亡くなってしまった)ことが伝わってくる歌詞でした。
過労死ご遺族のお話し
最後に過労死した方のご遺族の方の話が10分ほどありました。話している中で感情、涙がこみ上げる場面もあったようで、過労死で家族を亡くした悲しみというのはそう簡単に言えないんだと改めて思わされました。
ブラック企業研究家として思ったこと
当ブログでは2016年からブラック企業の発信をしていますが、実は今回のような労働問題のシンポジウムなどに参加するのは意外にも初めてでした。ブラック企業の情報も多数いただいてきましたが、メンタルを病んだ体を壊したなど命を落としたレベルの事案はそこまで触れたことがなかったため、今回初めて過労死で亡くなった人に関する話をガッツリ聞きました。
とにかく過労死した人の『リアルさ』がとことん伝わってくるような内容で、本人やご家族やどのような思いで苦しんできたかが伝わってきました。
同時に個人的に印象に残ったのが基調講演で牧内さんがおっしゃっていた言葉。
「過労死は防ぐ『決定打』がない」
たしかに過労死に関しては法律による取り締まりであったり、過労死そのものの認知も進みつつありますがそれでもいまだに過労死が大きく減少しているわけでもありません。
決定打がないということで、明確に「これをすれば過労死は防げる」というのもないため、対策をしようにもある意味難しい部分もあります。
最近は過労死やハラスメントを防ぐために啓発や相談体制の整備も進みつつあります。とにかく今はこれらの仕組みが少しでも機能することを願うばかりです。
メディア運営者として何ができるか?
当ブログ「涼しく生きる」では僕自身のブラック企業での経験を中心に長時間労働やハラスメントなどの経験談をお伝えしており、かれこれ8年に渡って発信を続けています。
僕は労働局等の専門機関に勤めているわけではないですし、特にこれと言った資格を持っているわけでもありません。その代わり個人としてブラック企業で経験してきた『リアル』を伝えることはできますし、当ブログだけでなく各種SNSも稼働しているので発信に関しても長けていると考えています。
そのためブラック企業のリアルを伝えることが僕にできることだと思います。
また最近考えている展望として今回のような労働問題・ブラック企業に焦点を当てたシンポジウムや講演会で登壇したいという思いも芽生えてきました。もしくは学校のキャリア教育の一環として授業で喋るのも良いかもしれません。
それにあたって今後は労働問題の専門家ともつながりを持ち発信の幅を広めつつ、ブラック企業の発信者としてより影響力を持ちたいと思います。
ブラック企業に関する体験談をお聞きしたい人や団体がいらっしゃいましたらぜひご依頼ください。