著者:長池涼太(ブラック企業研究家)
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みなさんは会社を辞めるときにどのような形で辞めますか?
一般的には
- 自分から会社に「辞めます」と伝えて辞める自己都合退職
- 会社からクビなどを伝えられる(会社都合退職)
がありますが、話題に挙がるようで挙がらないのが「退職勧奨」と呼ばれる形での退職。
実は当ブログでも「農業をクビになった」と発信してきましたが、実は書類上は退職勧奨になっていました。
そもそも退職勧奨とは何か?自己都合による退職やクビ(解雇)とは違うのかを解説しています。
退職勧奨とクビ(解雇)の違い
クビ | 退職勧奨 | |
労働契約 | 会社が一方的に労働契約を解除 | 会社が労働者に退職を勧める。断ることも可 |
失業保険給付 | 会社都合退職のため早くもらえる | 基本的に解雇と同じ扱い |
解雇と間違いやすいものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、会社が労働者に対し
第5章 仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき|知って役立つ労働法 厚生労働省
「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労
働者の意思とは関係なく会社が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。
退職勧奨に応じるかは労働者の自由であり、その場ですぐ答える必要もありませんし、辞め
る意思がない場合は、応じないことを明確に伝えることが大切です。
退職勧奨の場合は応じてしまうと、解雇と違って合理的な理由がなくても有効となってし
まいます。
クビに関しては労働者側の意思に関係ないため、ほとんど何もできません。
退職勧奨はあくまで会社が辞めるように「勧めている」ため、クビのような強制力はありません。
そのため、退職勧奨を断ることも可能ですしその場で返事をする必要もありません。。
実は農業はクビではなく退職勧奨だった
僕のSNSやこれまでのブログ記事でも触れてきた転職先の農業法人をクビになった話。
実は書類上はクビではなく退職勧奨で辞めたことになっています。
とはいえ、
- おまえは価値のない人間だ
- 能力が低すぎておまえに給料を渡したくもない
など散々な言われようで、これが退職勧奨だとしてもとても拒否できるような勇気はなかったですし、そういう空気でもありませんでした。
退職勧奨を拒否するって意外と難易度高い。
能力不足による退職勧奨は有効?
そんな退職勧奨を受けた話ですが、理由は恥ずかしながら「能力不足」。
退職後に離職証明書に記入していただきましたが、そこにも「能力の不一致(≒能力不足)」と書かれていました。
退職勧奨の理由としては、例えば、能力不足や素行不良、業務命令違反、経営上の必要などがあります。
退職勧奨通知書はもらうべき?もらうメリットと簡単なもらい方を解説|リーガレット
と弁護士の書いた記事もあり、仕事の覚えが悪いなど技術的な要因による退職勧奨や解雇もあり得る話のようです。
僕の場合は入社3週間で退職勧奨(≒クビ)を受けたのと、退職勧奨も込みで人格否定の発言が社長からありました。
もうちょっと長い目で見てほしかったと思う。
退職勧奨が無効になるケースもある
強制、脅迫など退職勧奨に同意せざるを得ない状況
脅しのような形で退職勧奨に同意するしかなかったような場合は、退職勧奨が無効になる可能性もあります。
実際に裁判の判例でも退職勧奨が無効になった例はあるようです。
自ら退職しなければ、勤務成績不良により解雇する旨の発言があり、従業員が退職に応じた(実際には、解雇事由は存在しなかった)という事案
【実際の裁判で問題になった事例】|湊総合法律事務所
例えば上記の事案は裁判で退職勧奨が無効になり、退職時から復職までの給与の支払いを認めたそうです。(横浜地裁川崎支部判決 平成 16 年 5 月 28 日判決 昭和電線電纜事件判決)
いろんな事案を調べましたが、『解雇』をちらつかせるパターンが多い印象です。
- 【実際の裁判で問題になった事例】|湊総合法律事務所
- [40] 強迫による退職の意思表示の有効性|厚生労働省
退職勧奨をする理由が適切ではない
退職の勧奨をするには相応の理由が必要です。
この退職勧奨に強制力はなく、従業員の合意が前提となります。
従業員に退職する意思がなければ退職させられません。
退職勧奨を行う理由は多岐にわたりますが、以下のものが主な理由となります。
【人事担当者向け】退職勧奨とは|具体的な進め方や応じない場合の対処法を解説|社会保険労務士法人 飯田橋事務所
- 業績不振
- スキル・能力の不一致
- 会社方針の変更
- 人間関係
- 法的・倫理的問題
一般的に退職勧奨は会社経営上のやむを得ない理由だったり、人間関係や倫理的などの問題になることが多いです。
逆に明らかにこれらから大きく外れた理由だと、退職勧奨は無効になる可能性があります。
お互いに納得できる形でなければいけませんね。
退職勧奨に即応じることを求められる
退職勧奨では、1週間程度の期間を目安として回答期限を伝えましょう。その場で回答させようとすると、退職強要とみなされるリスクがあるため、基本的には望ましくありません。
少なくとも、労働者が家族に相談しなければ回答は難しいケースが多いため、週末に伝えて検討してもらう等の対応が必要となるでしょう。
退職勧奨とは|進め方や注意点、応じない場合の対応等について|弁護士法人ALG
退職勧奨に応じるか即決させようとするケースもあるそうですが、法律的にはあまり好ましくないとされています。
退職勧奨を受けたうえでいったん持ち帰り、後日回答することも可能です。
最終的に退職するとしてもじっくり考える時間は欲しいところです。
退職勧奨で辞めると退職金が増える⁉
就業規則で退職金の支給が明言されていることが前提ですが、普通に自己都合で辞めるより退職勧奨を受けたうえで退職する場合は退職金の額が増えるケースがあるそうです。
退職勧奨による退職の場合、解決金や特別退職金といった名目で、退職金の上乗せした金額を支払われることがあります。おおよその相場は給与の3カ月から6カ月であることが多いようです。
退職勧奨された時の対応法|拒否の方法や退職金の相場について解説|ベンナビ
ただし退職金が完備されていて、解決金があったり増額の可能性もあるのはある程度大きい企業に限られます。
昔の僕みたく地方の中小企業や零細企業に努めている場合は、退職金の増額はあまり期待しないほうがいいかもしれません。
ちなみに厚生労働省によると退職勧奨に応じての退職は自己都合ではなく会社都合の退職の扱いになります。
労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。
労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
なお、退職勧奨に応じて退職した場合には、自己都合による退職とはなりません。
そのため失業手当は7日間の待機期間を経てすぐに受け取ることができます。
自己都合退職の場合は、失業手当がもらえるまでに2か月間の給付制限を経ないと支給されませんからね。
まとめ
- 退職勧奨とクビは違う
- 仕事の能力不足で退職勧奨を受けることもあり得る
- 会社が脅迫、強制的に退職勧奨するのは本来NG
- 退職勧奨は理由によっては無効になる
- 退職勧奨で退職金の額に影響が出ることもある
退職勧奨とクビは退職につながる意味では似ていますが、中身は意外と違いがあります。
退職勧奨されたからと言って応じなければいけない義務はないですし、強引な退職勧奨も本来は違法です。
もし退職勧奨されてもどうしても辞めたくない場合は粘ってもいいですし、場合によっては外部の機関に相談してもいいかもしれません。